こんにちは。
突然ですが、みなさんはコインハイブ(Coinhive)というマイニングツールをご存知ですか?
つい最近、このコインハイブを使ったサイトを運用していたとして、複数の人物が警察に検挙されており、罰金も言い渡されています。
以下は警視庁からの見解です。
マイニングツールの設置を閲覧者に明示せずに設置した場合、犯罪になる可能性があります。また、マイニングツールが設置されたウェブサイトにアクセスすると、パソコンの動作が遅くなることがあります。ご注意ください。https://t.co/GLl7GSzKqo
— 警察庁 (@NPA_KOHO) June 14, 2018
摘発に至った主な罪状は、不正指令電磁的記録取得・保管罪と言われています。
これは正当な理由がないのに、他人の電磁的記録、つまりデータを取得したことが問題視されているということです。
しかし、専門家や技術者の中には、今回の警察の動きを疑問視する声も上がっています。実は僕もそんな人たちの一人です。
調べてみるとコインハイブ自体は非常に面白いプログラムで、Webサービスにおける広告の概念を覆すような新規性を持っています。
もちろん利用を推奨する、というものでは一切ありませんよ!
今回は、コインハイブの仕組みについて説明していきます。
みなさんにもどのようなプログラムなのかを知っていただき、違法か合法か考えてもらうきっかけになればと思います。
- コインハイブってどんなプログラム?なにができるの?
- コインハイブが設置されているサイトを見るとどうなるの?
- コインハイブって本当に違法のままでいいの?
コインハイブ(Coinhive)ってどんなプログラム?
コインハイブは2017年9月に作られた、サイト運営者がサイト閲覧者の余っているCPUパワーを利用して仮想通貨のマイニングをさせるプログラムです。
すごく簡単にいうと、例えば僕がこのブログにコインハイブをプログラムとして組み込んでいるとします。(もちろんやっていませんよ!)
すると僕のブログを見にきてくれた人のパソコンにコインハイブがスクリプトを送り、仮想通貨のマイニング(採掘)を行います。そうして得た仮想通貨をもらうことができるのです。主にマイニングを行えるのは、仮想通貨「Monero」です。
マイニングという技術そのものについては、こちらに一部記載しています。
これにより得たMoneroはサイト運営者が7割、コインハイブ側が3割に山分けされる仕組みになっています。
オープンソースで提供されているので、個人のブログにも埋め込むことが可能です。
様々な活用方法が模索されており、ブログのようなWebページに埋め込む他、動画サービスにコインハイブを埋め込めば再生時間中にマイニングを行うことも可能です。
またゲームに埋め込めば、プレイヤーがプレイしている最中にマイニングを行なったりすることも可能になる予定です。
コインハイブ(Coinhive)の理念
コインハイブは、Webサイトに多く出回る「広告」の代わりになるマネタイズ手法となることを目的として作られたプログラムです。
現在ほとんどのWebサイトには広告やアフィリエイトリンクが貼られており、その広告料を収益源としているメディアも数多いです。
しかし、広告がたくさんあるサイトを見て、見づらいサイトだなぁ、と思ったことがみなさんも一度や二度ではないと思います。
コインハイブの開発者は、そうしたユーザビリティを損ねる可能性のあるWeb広告に異を唱え、その代わりとなる収益源としてコインハイブを開発したのです。
仮想通貨シェアの寡占を防ぐことができる可能性
現在個人でマイニングを行うのは、現実的に厳しいと言われています。
なぜならマイニングは通常、膨大な演算能力を持つコンピューターとそれを維持する電気代などのコストが多くかかるからです。
なので、現状主要な仮想通貨のマイニングを行なっているのは一部の団体や企業に限られています。
では、もしこのような大企業や団体同士が結託し、ある仮想通貨のシェアの過半数を独占した場合、市場にどのような影響が及ぼされるのでしょうか。
結果、その仮想通貨の市場は公平性がなくなり、場合によっては市場操作がされる可能性も出てきます。
コインハイブのような他人の余っているパソコンのパワーを借りて、個人でもマイニングを行えるようになると、そういった仮想通貨市場の独占を防ぐことができるかもしれません。
コインハイブが設置されているサイトにアクセスするとどうなる?
僕自身コインハイブが埋め込まれているサイトを見たことはないのですが、4月ごろ某海賊版漫画サイトにこのコインハイブが埋め込まれていたということが発覚しました。
なので日本でも実際にコインハイブが埋め込まれているサイトは存在していたということです。
実際にこういう漫画サイトを見たことがある方もいるのではないでしょうか?
ちなみにコインハイブはコンピュータウイルスではないので、仮にコインハイブがプログラムされているサイトにアクセスしてもPCやスマホのデータを消される、個人情報を抜かれる、などのようなことはありません。
起こりうる事としては、PCやスマホのCPUに負担がかかるので、動作が重くなる、それにより充電の消費が早くなる、電気代がかさむなどが考えれます。
それだけ?って感じですよね、それだけです。
コインハイブ自体は悪質なウイルスではありません。
データが消される、乗っ取られる、パソコンが壊れるのような害はないということを覚えておきましょう。
コインハイブ(Coinhive)って違法なの?
現行の日本の法整備では「違法」とされているという言い方しかできません。
というより今回の検挙に関しては、「疑わしきは罰せず」の精神で罰せらたというべきでしょうか。
実際に悪意を持ってコインハイブを設置しているサイト運営者がいるのも事実で、マルウェア開発者の収益源になっているといった問題が取り沙汰されています。
2014年にはあるAndroidアプリに、ライトコインやドージコインを自動でマイニングするマルウェアが仕込まれたことがありました。
さらに海外ではスターバックスの無線Wi-Fiを用いて、客のPCパワーでマイニングをさせていたということも発覚しています。
こういったプログラムとコインハイブの大きな違いは、コインハイブがオープンソースとして幅広いユーザーにプログラムを提供しているという点です。
誰もが手軽に他人のCPUを使えるようになったという点が、コインハイブが世の中に与えた大きな影響です。
警察が問題視しているのは「正当な理由がない」のに、閲覧者のCPUを勝手に使っている、ということです。
コインハイブ側では、すでにその対応を行っており、ユーザー側が明確に了承した場合のみ、コインハイブが走るようになる仕組みを構築しようとしています。
現行の法整備だと「疑わしきは罰せず」の方針をとるしかない。
マイニングツールに関する一刻も早い法整備が求められる。
コインハイブ(Coinhive)は今後どうなる?
さて、コインハイブについての仕組みや、アクセスするとどうなるのか、について説明してきましたが、今後コインハイブはどうなるのでしょうか。
結論から言うと、テクノロジーに法整備が追いつくのに、まだまだ時間がかかりそうですね。グレーゾーンの運用が長引きそうな印象です。
ユーザーの承認制になれば、法的な問題点はクリアできるでしょう。
実際に海外ではユニセフなどが寄付を募るのに、ユーザーの承認を得た上でコインハイブを導入しており、うまく活用しています。
Googleのガイドライン的にどうなの?
個人的にここが一番ネックになるのではないかと思っています。
コインハイブはサイト運営者にとっては広告にとってかわる収益源です。
Webサイトに広告が貼られなくなる未来がくると、一番不利益を被るのは広告の運営元、つまりGoogleです。
Google的にはコインハイブは喜ばしいプログラムとは言えないでしょう。
場合によっては、今後コインハイブが埋め込まれているサイトは検索順位に評価しない、などの対策が取られる可能性もゼロではありません。
法的には問題なくなったとしても、検索エンジンからどのような評価を受けるかは注目したいところです。
まとめ
コインハイブは、サイト閲覧者を煩わしいWeb広告から解放する可能性のあるプログラムですが、まだまだその位置付けが不安定であると言わざるを得ません。
また、サイト運営者が得られる利益面を考えても、広告を掲載していた方が収益率も大きいのが現状です。
今後法整備がどのようになされるのか、そしてこの動きに関してGoogleがどのような対応を示していくのかは注目が集まるところです。
ユーザーからの承認を得ているなら、コインハイブを使ってもいいよ!ということになれば個人的にも使ってみたいものです。